「八丁味噌」の名前をめぐる問題に進展がありました。
1月24日、農林水産省は「八丁味噌共同組合」という団体を、新たに「八丁味噌」を作るグループとして登録しました。この団体は、岡崎市で八丁味噌を作っている「カクキュー」と「まるや八丁味噌」というふたつの会社で構成されています。これにより、八丁味噌の名前を使える団体はふたつになりました。ひとつは、愛知県全体の味噌や醤油を作る会社で構成される「愛知県味噌溜醤油(たまりしょうゆ)工業協同組合」、もうひとつが今回新しく登録された「八丁味噌共同組合」です。
今回の登録を受けて、「八丁味噌共同組合」は感謝の気持ちを伝える文章を発表しました。その中には、「八丁味噌の味と文化を守り続けていきます。応援してくださった皆様に心から感謝します」という言葉が記されており、八丁味噌の伝統を大切に守り続けたいという強い決意が感じられました。
あらためて今回の経緯をふりかえり、わたしとしては農水省についていささか疑問を持っています。
それは単純に、制度の主旨がまもられていないからです。
どういうことでしょうか。
そもそも「地理的表示制度(GI)」というのは、特定の地域で作られた商品にその地域の名前をつけ、その品質や伝統を守るための制度です。たとえば「シャンパーニュ」という名前は、フランスのシャンパーニュ地方で作られた特別なワインだけに使えるものです。同じように「八丁味噌」という名前も、本来は岡崎市で伝統的な方法で作られる味噌だけに使われるべきものです。
しかし、 今回の解決策は、この主旨からはおおきく逸脱しています。愛知県の味噌も岡崎の味噌もそれこそ「くそ味噌」に扱っているわけです。
せめて今回のふたつの団体が使用するということであれば、こういうロジックでいくべきでした。まずは、一度、リセットする。そこからまず、「八丁味噌共同組合」に「八丁味噌」の登録をしてもらう。そのうえで、愛知県味噌溜醤油工業協同組合をそこに追加する。
これであればわかります。でも、そうはなりませんでした。
法律的には今回の対応に問題はないかもしれません。ただ、地理的表示制度の本来の目的や、八丁味噌が持つ特別な価値を考えると、今回の解決には疑問が残ります。
これからの時代は、地方にあるその土地ならではの価値を守り、それを未来につなげていくことがますます重要になります。今回の経緯をしっかりと整理し、今後の地方創生のために役立ててほしいと思います。
コメント