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【視察】行政視察レポート【兵庫県伊丹市:放置自転車対策について】

2017/10/24 13:30 活動アーカイブ

H29年度 兵庫県伊丹市:放置自転車対策について

1.  視察日程

平成29年10月24日(火) 13:30~

2.  視察先及び視察概要

兵庫県伊丹市:放置自転車対策について

3.  視察内容

■兵庫県伊丹市

 伊丹市は兵庫県の東端に位置しており、大阪市から約10kmと近く、大阪の衛生都市に位置づけられる。市域は南北に約5kmで地形は平坦であるのが特徴である。主要な公共交通機関である鉄道は、市域の東を南北にJR福知山線が走り、それと並行するようにその西側に阪急電鉄が通っている。それぞれの主要駅はJR伊丹駅、阪急伊丹駅で、それらを中心に放射線状に市街地が形成されている。以上のような構造上の特性から、昼夜間人口比率[i](91.01%)が低く、鉄道利用者が多いこと。また、市域に凹凸がなくコンパクトであるため市民の主要な交通手段として自転車[ii]が愛用されてきたことが、放置自転車の課題を生むことになった。

■課題

 鉄道駅周辺の歩道等に自転車が恒常的に放置されていることにより、①歩行空間の著しい阻害②景観の悪化が課題として挙げられていた。平成23年に行われた伊丹市の調査によると、阪急伊丹駅周辺では1,166台、JR伊丹駅では109台の放置自転車が確認されている。他方で、市民の日常的な足として機能している自転車による鉄道駅周辺の市街地への乗り入れを抑制することは、客足が遠のくことを危惧する地元の意向があり難しい状況であった。つまり鉄道駅周辺での自転車利用による利便性を低下させることなく、上記2点の課題を解決することが求められた。

■放置自転車対策について

啓発

・自転車安全教室などの開催/駐輪指導員の増強/路上サインの見直し

規制強化

・撤去手数料の適正化/撤去時間の延長、ランダム化/押し歩き区間の設定

駐輪場

・既存駐輪場の再整備/機械式路上駐輪場/地下(地上)ハイテク駐輪施設の整備

 

 そこで、伊丹市では平成27年11月1日を契機に課題の解決に向け、啓発-規制強化-駐輪場の機能を循環させるという方針を決定、実施した。それらの具体的な施策としては以下のようになる。

 特筆すべきは、先の課題の対応のために整備された駐輪場である。阪急伊丹駅周辺の整備された機械式駐輪ラックは、道路占有型と呼ばれるスキームを採用した。これは、自治体側が民間事業者に道路占用許可を出し、民間事業者は自治体へ占有料を払う。民間事業者は占有地に自らの資本で施設を整備し、日常的な運用、管理を行い、利用者から得られる料金で事業を展開することになる。また、利用者側にとっても供給されるサービスが市場原理により調整されることが期待される方式である。

 また、通勤通学と比較的長い時間にわたり使用する駅周辺の駐輪場にかんしても主要な施設からの距離や施設の階数など、いわゆる使用者の利便性の多寡を基準に料金改定を見直すことで、駐輪場使用の分散を図ったことも併せて注記しておけなければならない。

 伊丹市では上記の3点(啓発-規制強化-駐輪場)を一斉にスタートさせたことで、施策開始直前の平成26年以降の放置自転車の推移が以下のように顕著な効果を示した。阪急伊丹駅でH26-918台、H27-522台、H28-297台、H29-159台。JR伊丹駅周辺ではH26-63台、H27-16台、H28-26台、H29-16台と著しい効果を見せることとなり、課題の対応にむけ順調に対策が行われてきたことが伺われる。

4.  所感

■伊丹市の放置自転車対策について

□対策は3つの方針をパッケージにして一斉に行ったことが、課題解決にむけ一定の効果を現わしたことを伺うことができた。

□あらためて、日常的な使用における自転車対策には、中心市街地のいわゆる短い時間における対策と、通勤・通学での比較的長い時間における放置対策をわけて考える必要があることを認識した。

■岡崎市への進言

□主要回遊導線の計画と自転車

 岡崎市では中心市街地において主要回遊導線を設定したまちづくりが行われている。それに伴い、今後、中心市街地における自転車の乗り入れ増加が予想されるなかで、いかに利便性を下げず、他方の歩行者にも考慮した導線づくりを計画する必要性が生じる可能性を十分に推察できる。そのさいには伊丹市の事例は一つの参考になる。

□JR岡崎駅、名鉄東岡崎駅

 市内の主要な鉄道駅である、JR岡崎駅、名鉄東岡崎駅の駐輪場の状況は市営、民営と運営主体が混在している状況である。他方で、拠点再整備による過渡期的な混乱は一部みられるものの、放置自転車について著しい混乱があるとは菅見の限り把握していない。しかし、利用者の利便性や、その属性にあわせた料金設定を行うことで、持続的な運営を可能にしつつも、今以上に公共の福祉に与する施設を目指すさい、伊丹市の事例はその一助になるのではないかと推察される。


[i] 夜間人口を100とした場合の昼間人口の比率を表したもの。一般的に、都市部ではこの比率が高くなり、都市近郊では低くなる。(ちなみに岡崎市は93.91%)

[ii] 直接的な数値は手元にないが、自動車の保有台数を岡崎市と比較すると、伊丹市の世帯あたり乗用車保有台数は0.74台であり、岡崎市のそれは1.52台である。

 

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