【視察】行政視察レポート【宮城県・震災の復興、復旧】【荒川区タブレットPC導入】
2017/07/12 00:00 活動アーカイブ
平成29年度 行政視察報告書
平成29年7月19日(水)
チャレンジ岡崎・無所属の会 杉山 智騎
江村 力
小田 高之
1. 視察日程
平成29年7月12日(水)~7月14日(金)
2. 視察先及び視察内容
(1) 宮城県亘理町
震災復興からの安全安心を確保するまちづくりについて
(2) 宮城県山元町
震災復興・復旧の進捗について
(3) 東京都荒川区
タブレットPC全小中学校導入について
3.視察内容
■震災復興からの安全安心を確保するまちづくりについて
7月12日(水) 14:00~
ⅰ)宮城県亘理町
人口 3.4万人、面積 73.6k㎡
亘理町は宮城県の南東部、仙台市から南へ26キロメートルほどのところに位置しており、東に太平洋、西に阿武隈高地、北に阿武隈川が流れていて、冬は比較的暖かく、夏は心地よい海風が暑さを和らいでくれる、とても暮らしやすい地域。東に黒潮流れる太平洋、西に標高200メートル前後の阿武隈高地の丘陵地帯、北には阿武隈川が流れ、肥沃は土地が広がっている。亘理町の面積は73.60k㎡で、南北10km、東西7km。縦長の形をしており、中央部の水田地帯を住宅地が取り囲む緑豊かな田園都市となっている。亘理は阿武隈川の南岸にあり、川を「渡る地」として「わたり」という地名になったといわれている。江戸時代には、亘理伊達家の治世のもと城下町が築かれ、いまでもいたるところにその風情を感じることができる。昭和30年(1955)2月に、亘理町・荒浜町・吉田村・逢隈村が合併して、現在の亘理町が誕生した。
ⅱ)震災復興からの安全安心を確保するまちづくりについて
●亘理町震災復興計画平成23年3月11日に発生した東日本大震災は、日本観測史上最大のマグニチュード9.0を記録した地震と大津波により、かけがえのない尊い生命と財産、これまで築き上げてきた歴史的、文化的財産をも奪い去るとともに、市街地や商業・観光施設、農水産業施設、住宅、交通網、行政機能など広範多岐にわたる地域の社会的機能が壊滅的となり、社会経済活動に甚大な被害をもたらした。大震災の猛威や体験を教訓とし、自然災害を完全に防御するのではなく、被害を最小化する「減災」の考え方に基づき、町が総力を挙げて復旧・復興に取り組んでいかなければならない。このことより、国や宮城県の震災復興計画を尊重し、町民、団体、企業、また、防災に関する学会や研究機関からの提言などを踏まえ、国、県と緊密な連携を図り、亘理町震災復興会議での検討を重ね『亘理町震災復興計画』の策定に至った。
計画の期間を平成23年度から平成32年度までの10年間とし、復旧期、再生期、発展期の3期に区分し復旧施策・事業に取り組んでいる。
・復旧期:町民生活の再建や企業活動の再開に向け必要な住宅、社会生活基盤等の復旧と整
備を早期に進め、安定した生活や企業活動を取り戻すための期間
・再生期:震災の復旧を完遂することを目的とし、亘理町が安全で安心なまちとなるよう取
り組む期間
・発展期:亘理町が更なる発展を遂げ、新たな魅力と活力にあふれ、災害に強いまちとして
復興を告げる期間
●津波防災対策
・一次防潮施設の復旧
防潮堤、河川堤防は、レベル1津波に対応した構造で復旧する(国の方針)
・二次防潮施設の整備
一次防潮施設では防ぎきれないレベル2津波に対しては、津波の勢い及び住宅地等での
浸水深を軽減するため、海岸防災林の復旧、嵩上げ道路(2線提)等の内陸の防潮施設を
整備する
・レベル2津波に対応した土地利用計画の策定
今次津波や津波シミュレーション結果から、津波による浸水深等を踏まえ、居住地や移転
を促進する地域の設定を行い、それらの結果から、地域ごとの安全対策、避難対策を行う。
●復興・再生に向けての復旧計画
・復旧期(平成23年度~平成25年度)
町民生活の再建や企業活動の再開に必要な住宅、社会生活基盤等の復旧と整備を早急に
進め、安定した生活や企業活動を取り戻すための期間
・再生期(平成23年度~平成27年度)
震災の復旧を完遂することを目標とし、亘理町が安全で安心なまちとなるよう取り組む
期間
・発展期(平成26年度~平成32年度)
亘理町が更なる発展を遂げ、新たなる魅力と活力にあふれ、災害に強いまちとして復興を
遂げる期間
ⅲ)所感
地震による被害は数件の家だけだったが、揺れの約1時間後にやってきた津波による被害が広域に及び、何から手を付けていいのかわからない状態だった。161事業(現在7割ほど終了)を洗い出すのに2年かかり、震災後の最初の2、3年は机上での調査になってしまった。震災直後は各地からボランティアとしてやってきてくれたので、社会福祉協議会がボランティア本部として取りまとめたが、初めのうちは、余計混乱が増えた要因ともなってしまった。各地から出たごみを分別(鉄、がれき、木材など)したので、他の地域に比べて復興が早く進んだ。震災に対して、準備したほうがいい対策や考え方をうかがったところ、震災は規模も状況も被害も千差万別。準備することはなかなか難しい。どうしても、震災後からの対策となってしまう。しかし、日頃からの訓練や防災計画はしっかりと行なうことと地域力を高める必要があると助言をいただいた。普段から地域力の必要性を訴えてきているが、被災時は些細なことでもめ事が起き、ある程度の「顔パス」で物事が進むことも多く、実際の被災地である亘理町では日頃の地域交流があった地域とない地域では被災地での暮らしに大きな違いが生じた。岡崎市として、通常時での災害避難訓練はもちろんのこと、地域力がもっと高まるような働きかけができ、市民の皆様のバックアップができる体制づくりをしっかりと行なっていく必要がある。有事の際に少しでも被害が少なくできるようこれからも体制づくり、声掛けを行なっていきたい。
■震災復興・復旧の進捗について
7月13日(木) 10:00~
ⅰ)宮城県山元町
人口 1.2万人、面積 65k㎡
産業別町内総生産:一次1.3% 二次50.0% 三次48.6%
特産品は「仙台イチゴ」、「山元リンゴ」、「山元ホッキ貝」だが、震災にて、この町の三大ブランドは、丘通りの「山元リンゴ」を除き「仙台イチゴ」と「山元ホッキ」は壊滅的な被害となった。高齢化率は37.1%を県内4位で少子高齢化、人口減少が喫緊の課題となっている。山元町町民憲章「明るく住みよい和のあるまちをめざして 1.郷土を愛し、きれいな町をつくります。 1.生きがいのある、あたたかい町をつくります。 1.教養を深め、文化のかおり高い町をつくります。 1.健康で楽しく働ける町をつくります。 1.みんなの力でゆたかな町をつくります。」
ⅱ)震災復興・復旧の進捗について
●被害の概要…被害状況(平成28年12月27日現在)
平成23年3月11日14:46三陸沖を震源とするマグニチュード9.0の巨大地震発生
山元町は震度6強を観測。14:49大津波警報発令。15:50大津波襲来
項目 |
被災状況等 |
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死亡者 |
637人…遺体未発見の死亡届17人及び震災関連死20人含む。 町内での遺体発見数は680人 |
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行方不明者 |
0人(死亡届提出17人を除く) |
|||||
負傷者 |
重傷者9人 軽傷者81人 |
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家屋被害 |
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全壊 |
大規模 半壊 |
半壊 |
一部損壊 |
合計 |
|
(棟) |
2,217 |
534 |
551 |
1,138 |
4,440 |
|
(%) |
50.0 |
12.0 |
12.4 |
25.6 |
100.0 |
避難所 |
避難所数19か所 避難者数5,826人 一次避難所は8月16日に閉鎖、二次避難所は10月1日に閉鎖 |
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避難指示区域 (津波浸水域) |
10行政区(沿岸部6)面積24㎢(40%)2,500世帯 7,500人 一部を除き11月7日までに段階的に解除 |
●津波防災区域の指定までの流れ
H23年 3.11 6.末 7.1~ 8.末 11.7 11.11 H28.4 |
津波浸水区域を避難指示区域に指定 仮堤防2m完成(避難指示区域の一部解除) 特例法に基づく建築制限 仮堤防5m完成(避難指示区域の一部解除) 避難指示区域全区域解除 災害危険区域指定 災害危険区域の名称変更 |
●津波防災区域
制限の対象:居住用の建物の新増改築
種別 |
浸水深 |
制限内容 |
第1種 |
概ね3mを超える地域 |
建築禁止 |
第2種 |
概ね2~3mの地域 |
基礎上端の高さ1.5m以上の住宅は建築可 |
第3種 |
概ね1~2mの地域 |
基礎上端の高さ0.5m以上の住宅は建築可 |
●復興・再生に向けて…復興計画策定
【庁内検討体制】
・震災復興本部
役場内で、町長を中心に構成された組織。町の復興計画策定の中心となり協議や総合調整
を行う。
・震災復興検討委員会
役場内で、各課の代表により構成された組織。町の復興計画原案の検討や作成を行う。
・災害対策特別委員会
議会の中に設置された組織。災害対策や、町の復旧復興に関する協議を行う。
【庁外検討体制】
・町震災復興会議
町民代表10人からなる組織。
・震災復興有識者会議
専門家、学識経験者7人からなる組織。
・町内各種関係団体・グループ
町内にある約40の団体・グループ
・住民によるパブリックコメント
郵送や電子メール、アンケートなどを用いた意向調査により、町の復興に関して町民から助言をいただく仕組み。
●復興・再生に向けて…コンパクトなまちづくりを目指して
・震災による人口減少や急増する高齢者の孤立化を抑制し、コミュニティの活性化を図る。
・生活利便施設の立地誘導と優良宅地の供給で定住を促進。
・公共投資の選択と集中で行政コストの抑制を効果的な事業実施。
●復興・再生に向けて…土地利用計画
①新JR常磐線と国道6号を軸とした市街地の形成
・つばめの杜地区
・新坂元駅周辺地区
・宮城病院周辺地区
②安心して暮らせる住宅・宅地の供給
・安全な住まいの確保
・復興公営住宅の整備
・津波防災区域内住宅の移転宅地の整備
③減災を視野に入れた防災緑地ゾーンの整備
・多重防御(堤防、防災緑地、嵩上げ道路)による津波対策
・交流ゾーンの整備
・既存財産の有効活用
④安全性・生産性が向上した産業用地の整備
・産業用地の集約
・いちご畑の集約
・企業誘致と雇用の確保
⑤自然を活かした山地の活用
・豊かな自然環境の保全
・交流拠点としての活用
ⅲ)所感
山元町は山下村、坂元村が合併したできた町。東北大震災後から坂元駅には何度も訪問してきた。被災後2、3年間は坂元駅周辺の復興作業が全く行われなかった。ずっと疑問に思っていた。今回の詳しい説明を受けてやっと理解できた。津波防災区域の第1種に指定された坂元駅周辺は居住用の建物の建築禁止に指定された。そして、コンパクトなまちづくりとして3地区(新坂元駅周辺地区、宮城病院周辺地区、つばめの杜地区)への移転を促進していた。山元町は被災後から住まいに対して力を入れてきた。新しい市街地の整備を行い、復興公営住宅を整備してきた。そして、新たに防潮堤、県道相馬亘理線の整備により、交通網を整備しながら、堤防も強化を行った。常磐線も内陸へ移動させ、今回の大震災で学んだことを全て次の世代のために活かした。岡崎にも南海トラフという大震災が近いうちにやってくると言われている。様々なことを想像し、対策をとっておく必要もあると感じた。
■タブレットPC全小中学校導入について
7月14日(金) 10:00~
ⅰ)東京都荒川区
人口 21.3万人、面積 10.16k㎡
都東部に位置し、墨田川に育まれた歴史と文化に支えられて発展してきた。現在、人々と墨田川との豊かな関係を回復するため、スーパー堤防の整備や水辺と調和した環境整備などが進められている。住居と商店街が混在し、墨田川の豊かな水辺空間や、あらかわ遊園、沿線のバラに囲まれた都電荒川線などの情緒豊かな風景が見られる。都心に近接した交通の利便性や墨田川の水辺空間、下町らしい人情味あふれるコミュニティを基礎とした地域力、中小企業が多くモノづくり産業の集積した地域特性など、区の強みを最大に活用し、心の豊かさや人とのつながりを大切にした、区民一人一人が真に幸福を実感できるまちをめざす。
ⅱ)タブレットPC全小中学校導入について
●荒川区 教育の情報化の取り組み
(平成17年度)
教育委員会、全教員、全普通教室をつなぐ「荒川教育ネットワーク(Aen)の敷設」
↓
(平成22年度)
小中学校全普通教室への電子黒板の導入
↓
(平成24年度)
デジタル教科書のネットワーク配信
↓
タブレットPC導入モデル事業
平成25年 6月設計 7月構築 8月教員研修 9月運用開始
モデル校4校 1200台(小学校 3校、中学校1校)
↓
タブレットPC全校導入
平成26年9月~ 全校での運用開始
区内小学校、中学校 約10,000台
●タブレットPC導入の短期的な目的
・教えるツールとして
電子黒板の導入により進められている「わかりやすい授業」の推進をタブレットPCの
導入により、さらに加速させる。
・学習ツールとして
子どもたちのメディアに対してのリテラシー(活用能力)を身に付けさせる
●タブレットPC導入の長期的な目的
・子どもたちに、これからのグローバル社会をたくましく生き抜くための「21世紀型能
力」を身に付けさせる
●タブレットPCを活用した実践
・個人学習で学びを深める
・自分のペースで反復学習
・ペアで自分の考えを伝え合い
・グループで協力しながら課題解決
・電子黒板と連動して自分の考えを発表
・ディベートでも活用
・手書き入力、キーボード入力
・実験や実技教科での活用
ⅲ)所感
荒川区のタブレットPC全小中学校導入について視察の際、現場での実際の使い方を見せていただきたいとお願いをしたところ、第二日暮里小学校が快く受入れをしていただいた。タブレットPCを導入することにより様々な利点、目的があると思うが、実際の授業を見せていただき、感じたのは、生徒たちのやる気は凄く向上していると思った。実際、タブレットPCを有効活用できているかどうかは不明点も多くあり、改善点も多く感じたが、生徒たちが勉強、授業に主体的で自主的になっている子が多かった。そして、友達との関わり合いも多く、将来のための人格形成にとっても大変意義のある試みだと感じた。そして、荒川区の試みはタブレットPCの普段使いというところに重きを置いていて、特別なものではなく気軽にさわれる物という立ち位置を構築しているのはとても素晴らしかった。本格導入したときに32億円/5年(リース)で行ない、他のものも含めると約7億8000万円/年かかっているとのことです。また、荒川区では全校エアコンは完備されている。そして、トイレは様式トイレを生徒用にも完備され、シャワートイレも導入されている。岡崎は全国的に見ても1歩も2歩も遅れていることを実感させられた。まずはエアコンから早急に対応し、子どもたちの教育現場の充実の必要性を今後も引き続き、訴えていきたい。